旦那様探し

 

「そんな……主任が可哀想すぎます」

 

「ありがと。でも私なら平気だから。そんな肩書きなくても仕事好きだし」

 

 

昨日バーで項垂れ愚痴をこぼしていた口がなにを言う。と、心の中で突っ込んでおいた。

 

 

「私も、主任が主任じゃなくても、主任のこと好きですから。尊敬してます」

 

「寧々ちゃん……」

 

 

思わず朝からジーン。こんなこと言ってくれるのこの子くらいだよ。

 

 

ありがとうと言うと、寧々ちゃんは少し困惑ぎみに頷いた後、行きましょうかと私の背中を押した。

 

本当、可愛い後輩。

 

結婚目当てで営業部を希望してきた女子共に、爪垢を煎じて飲ませたいものだ。

 

私が勤めるここ、J&Dは全国シェア30パーセントを占める医療機器メーカーだ。

 

 

その中で私は入社当初から営業部にいる。お局とまでは言わないが、営業部にいる僅かな女子社員の中では一番の古株だ。

 

 

なぜなら営業部を希望してやってくる女の子はだいたい将来の旦那様探しが目的で、相手が見つかれば2、3年で自然と寿退社していくからだ。

 

 

きっと今いる社員たちもそのうち二人で雁首そろえ、招待状なんて渡してくるのだろう。もう何度も経験した。同期の子もそうだった。

 

 

まったく、仕事をなんだと思っている。辞められる度、しわ寄せがくるこっちの身にもなってほしい。

 

 

とはいえ、彼女たちの気持ちが全くわからないわけでもない。

 

 

一部上場企業の花形の営業部で将来の旦那様をみつけ、安定した暮らしをしたいという現実的な夢を抱くことも立派な将来設計だし、寧ろそれが女に生まれてきた幸せというやつなのだろうとも思う。

 

 

現に私だって結婚しようとしていたわけだし。まぁ、現実そんなに甘くなかったわけだけど。

 

 

 

「おはよー」

 

 

いつものように挨拶をしながら戦場へと足を踏み入れる。するとすぐに次々と返事が返ってきた。既に半分以上は出勤していた。

 

 

その声を背にデスクつくと、さっそくパソコンの電源を入れた。

 

 

と、同時に、ふと目に止まったものがあった。フロアの隅で女の子たちが寄り合って、おしゃべりを繰り広げている様子だ。

 

 

それはどこか浮足立っているように見えた。それにいつもより香ってくる甘い匂い。

 

……ん?なんかいつもより化粧濃くないか?なにかあるのだろうか?